地元の食材を地元でいただく、地産地消の手作りジェラート
「レシピの数は?」と伺うと、少し困った顔に。
「う〜ん…何種類って難しいなぁ。良い素材があれば、それをジェラートにするし、新しい素材と出会えばそれをジェラートにしたらどうなるんだろうって。ベースはミルクが2種類(卵の入ったものと入らないもの)、シャーベット、ヨーグルトと4種類あるから、素材×(かける)4倍のレシピになるからねぇ。」
「つまり無限大ってことですね」という私ののんきな問いかけに、一瞬だけ顔を苦しそうにゆがめ、
「納得のいかないものは出せないけどね。」
朗らかで明るい第一印象とは、全く違う職人の顔でお話くださった木村晃治さん。
遠州袋井市の古刹、可睡斎門前にお店を構える「じぇらーとげんき」さんのオーナーであり、そのジェラート作りを1人で担っていらっしゃる。
店内にあるアイスケースの中には、常時14種類のジェラートが並び、時にはとうもろこしやかぼちゃなどもジェラートになる。
地元の袋井を始め磐田や浜松、森や川根など近隣の素材、旬の素材にこだわっているので、いつも同じジェラートがあるとは限らないところが、嬉しくもあり哀しくもあるところ。
「美味しい!もう一度食べたい!誰かにも食べさせたい!」と思っても、次回訪れたときに同じ味が待っているとは限らないからだ。
でもその分、今度はどんな味が待っていてくれるんだろうって、新しい出会いにワクワクできる喜びもあるはずだ。
門前でジェラート屋さんを始めて14年。
元々は地場産のお茶を広めるためにお茶屋さんを営んでいたのだが、可睡斎を訪れる観光客相手の商売として、お茶だけではもったいないし、お茶自体もそれほどお土産としては売れない。だったら「お茶屋だからこその、“日本一美味しい”抹茶のアイスを作ろう」と一念発起したという。
まずは、「ジェラートげんき」の源になったそのお抹茶のジェラートをいただいてみる。
抹茶は、お店にある石臼で毎日挽いていて、挽きたてのものを使用している。
“お茶屋のこだわり”だという、そのお味は、確かに風味も香りも、よくある抹茶ソフトや抹茶のジェラートとはひと味違う。
爽やかな苦味と、口の中で溶けた後、ふわっと鼻に抜けるお茶の香り。甘さが控えめなのもお茶本来の味をひきたてている。
普通、お菓子の抹茶味に使用されるものは、そういう加工品用のために生産された抹茶だが、こちらのお店で使用しているのは茶道で実際に使用される高級品。
当然原価も手間もかかるが、「お茶屋だからこそこだわりたい」という木村さんの意気込みが込められた逸品だ。
おまけに添えてくださったのは、なんと牡丹のアイス。お店一番の人気者だという。
ミルクと卵ベースの白い色に、可睡斎の牡丹の花弁を練りこんだ上品な淡いピンク色…可憐な牡丹の花をイメージさせる。初めて食べたお味だけど、美味しかった!
「今日のオススメはスモモ。もう少したつと、原材料がソルダムになりますけど。ピンクの色はスモモの場合には皮から、ソルダムでは実の色から出しているんですよ。」
という、すももソルベがまた絶品!!
口に含んだときの印象は、まるで生のスモモを食べたかのよう。スモモをかじった時の美味しさと感動がそのまま口の中に広がるのだ。スモモの果実本来のあわ〜い甘酸っぱさが、見事に再現されている。
他にも色々試食させていただいたが、どれも素材の良いところを凝縮してジェラートというカタチに閉じ込めたかのよう。
ある人が子育て・人育ての極意として「その子の長所をほめてひきだしてあげよう」と言っていたが、木村さんが作るジェラートはまさにそれ。
「ここは田舎だから(笑)、その分、良いものが直接生産者さんから手に入るんです。枝についたまま完熟したものが、ね。スーパーに並ぶ流通ルートだったら、完熟前にもいじゃうんですよ。どっちが美味しいか、分かりますよね?」
とおっしゃるが、素材そのものの良さはもちろん、木村さんの腕があってこそ。
きっとその素材の持つ美味しさや風味、力強さ、時には渋さまでもを長所としてジェラートに仕上げているのだろう。木村さんのジェラートへの、ひいてはそれを食べに来るお客さんへの愛情がたっぷり感じられる。
お客さんへの愛情といえばやはり、精進アイスだろう。
どのジェラートも化学合成の添加物を使用しないというこだわりを持っていらっしゃるのだが、それをさらに昇華させたといえるのが精進アイスだ。
アレルギーのせいでアイスを食べられない子供さんを持つ方からの声をきっかけに誕生したという。
「牛乳や生クリームがダメなら豆乳を使いましょう、卵がダメなら卵は使わずに作りましょう、防腐剤を使ったレモンがダメなら安全なレモンを探しましょう…小さなお店だからこそできること。」
と木村さんは言うけれど、なかなかできそうでできないことだと思う。
アレルギー症状というのは人それぞれだし、様々なのものがあるので、一概に全てのアレルギーを持つ方が食べられると言うわけではないかもしれない。でも、今まで“アイス”や“ジェラート”を食べられなかった人たちの中で、確実に何人かはその美味しさを味わうことができるようになったのだと思うと、なんだか私まで嬉しくなってくる。
人に“幸せ”や“元気”を与えられる仕事って、うらやましい。もちろん、それに伴う代償(=努力や苦労)があってこそなのだろうけど。
暑い夏の日差しが照りつける午後、お店はたくさんのお客さんでにぎわっていた。
小学生から大人まで分け隔てなく声をかける木村さん。常連さんと冗談を言い合ったりするたびに、明るい笑い声が店内に響き、帰り際にはこどもたちに「気をつけてね」の声。
こういう町の社交場みたいな店も少なくなってきた。
人と人とのふれあいもウレシイお店だ。
「ジェラートは奥が深い。まだまだ精進だね。」
そうおっしゃる木村さんのアイデアあふれるジェラートたち。
次はいつ、何を食べられるだろうか。折々の季節におジャマするのが楽しみなお店がまたひとつ増えてしまった。

シングル(1色)300円 ダブル(2色)350円 トリプル(3色)400円
テイクアウト用の容器もある。(120ml 250円〜)
夏はかき氷も人気。こちらも自家製シロップに手削きの氷と、こだわりの品。450円〜 |
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